未来を創る技術戦略
照明、冷暖房、自動車、携帯電話、コンピュータ。私たちの豊かな暮らしは莫大なエネルギーに支えられています。昨年の震災と原発事故以来、日本のエネルギーをいかにして確保するのか盛んに議論されてきました。
どうすればエネルギーを確保できるか。現代文明を支えるエネルギー源を石油のような枯渇性資源に求める限り、私たちはこの問題と向き合わなければなりません。
今回は、この問いを考え抜いてこられた茂木源人准教授にお話を伺いました。
先生の研究内容について教えて下さい。
研究室の名前にしている社会戦略工学とは、社会システムをデザインすることです。将来の社会をどうしたいか考えることで必要となる技術を見定めます。さらに、実現可能な技術戦略を選ぶため、現状のままならどうなるか、何か行動を起こした場合どのような影響が出るかといった予測や評価を行っています。
在来型石油生産キャパシティと中東のエネルギー消費
量の推移予測。石油の産出量は頭打ちになる一方で中東
のエネルギー消費が指数的に増加すると予想されている。
たとえばエネルギーは数十年の単位で状況が動く世界です。今日決めたことが実現できるのはそれだけ先。30年後どうしたいかを考えて、今から戦略的に技術開発を行わなければ間に合いません。
具体的な話としては、油田のデータベースから石油の産出量を予測すると図のようになりました。このグラフから30年後には中東内の原油消費量が産出量を上回ることがわかります。
これでは中東から石油が輸出されず、世界経済が破綻してしまいます。したがって今後数年で石油に代わるエネルギー源を大量に導入する目処を立てなければならないことがわかります
エネルギー問題に具体的な解決策はあるのでしょうか。
その答えとなる再生可能エネルギーを大規模に導入した社会のモデルとして、私たちはサウジアラビアの今後に期待をしています。サウジアラビアはすでに原子力発電の導入を決めていますが、発電所ができるのは10年以上先です。それでは間に合わないし足りない。石油に頼らず急増するエネルギー需要に応えるには、再生可能エネルギーを大規模に導入するしかありません。
サウジアラビアには豊富な太陽光があります。数年後には世界に先駆けて、太陽光によるGW(ギガワット)クラスの完全商業発電プラントの立ち上げを目指しています。太陽光発電事業において充分な収益が出せるようになれば世界中から投資が集まり、太陽エネルギーの利用が一気に促進されます。また、世界中で使える商業的な太陽エネルギー利用技術が育ち、グローバルなエネルギー問題の解決につながることを期待しています。
このように将来の社会をどうしたいかを考えると、そこに必要な技術が見えてきます。時間と資源の制約の中で将来必要となる技術を開発していくためには、技術戦略が不可欠です。
最後に読者に向けたメッセージをお願いします。
エネルギーや資源を好きなだけ使って経済成長する時代は終わりました。そこでエネルギーや資源をできるだけ使わずに付加価値を作り、経済を回す方法を考えてほしい。
想像力は無限だから、無限の価値が作れる。そうすることで持続可能的な発展ができます。その可能性を信じてください。君たちなら未来をバラ色にできます。
茂木研究室のHP
(インタビュアー 朝倉 彰洋)